最高のさくらんぼを消費者に届ける(ドキュメンタリー)

アンスリーファーム(山形県寒河江市)<https://anthreefarm.com/>
代表取締役 安達史倫
専務取締役 川合祥吾

廣田商事(横浜市青葉区)<https://hirotarian.ne.jp/>
専務取締役 三輪圭史
広報室長 佐々木有二

インターカラー(東京都新宿区)
代表取締役 藤澤孝

2024年6月21日夏至。日本一のさくらんぼの産地として知られる山形県は寒河江市のアンスリーファームにメンバーが集結した。テーマは最高のさくらんぼを消費者に届けること。名刺交換後の挨拶もそこそこに作戦会議は始まった。

初顔合わせからすぐにトップギアへ

川合「さくらんぼは最もデリケートな果物だと考えています」

色合いの良さとおいしさが見事に比例している。しかも衝撃を与えるとあっという間に劣化する。通常のフルーツは訳あり品も最高級品も味の面では大差がない。しかしさくらんぼは違う。100%のさくらんぼを消費者のもとに届けるのは至難だという。

その困難に挑戦してきたのがアンスリーファームだった。朝にもぎ、その日のうちに出荷する。品質管理を徹底する。作物の評価は極めて高い。県の品評会で農林水産大臣賞を3回も受賞した。

川合「今年は天候が悪く、600kgもいで400kgは出荷基準に満たない。ぜんぶごみになってしまいました」

川合専務が輸送への気遣いを語る。「完璧に詰めても、輸送中に横倒しされたら終わりです」。傷んだところから色が変わってしまう。

詳細を聞いていた三輪専務が提案した。

三輪「分かりました。我々が横浜から直接取りに伺います。最高の状態で私達のお客様に届けます」

三輪専務の廣田商事は日本最大の基礎自治体である横浜市の青葉区を中心とする新聞販売店として始まった。配達手数料と折込チラシが本来の収益の柱だった。しかしそのモデルに飽き足らず、自らチラシを作り、注文品を自ら配達するところまで事業を拡大した。今では地域の一大メディアとなっている。

アンスリーファームの最高級のさくらんぼを地域の顧客に紹介し、販売する。三輪専務の脳裏には消費者からの高評価が見えていた。一年目よりも二年目、二年目よりも三年目と取扱高が増えていく。その確信が降りていた。

三輪専務「注文を取るための作戦はできています。当社のマスコットを使ってアピールします」

川合専務「よろしくお願いいたします」

細部の確認を経て商談はまとまった。そしてメンバーはさくらんぼを詰める小部屋へと移動する。川合専務が「大リーガー級」と言う女性職人さんが黙々とさくらんぼを箱詰めしている。それは宝石のように見えた。

藤澤社長がその箱を写真撮影しようとしたときである。「ちょっとこれは」と職人さんが手で遮った。「これは写真に撮っていただけるようなものではありません。2級品です」

藤澤社長は「こんなに美しいのに?」と驚く。でも答えは同じだった。

三輪専務の目が「よし。自分の判断は間違ってなかった」と語っていた。

2024年夏至。一つの農家と一つの地域媒体が同じ目標に向け第一歩を踏み出した。

取材 文 豊川博圭